被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 

信託契約における残余財産の帰属権利者として取得した土地等の譲渡に係る租税特別措置法第35条第3項に規定する被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用可否について

 

取引等に係る税務上の取扱い等に関する事前照会
〔照会〕

照会の内容

① 事前照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び事前照会者の求める見解の内容) 別紙の1のとおり
② 事前照会に係る取引等の事実関係(取引等関係者の名称、取引等における権利・義務関係等) 別紙の2のとおり
③ 2の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由 別紙の3のとおり
④ 関係する法令条項等 租税特別措置法第35条信託法第183条
⑤ 添付書類

別紙

信託契約における残余財産の帰属権利者として取得した土地等の譲渡に係る租税特別措置法第35条第3項に規定する被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用可否について

1 事前照会の趣旨

 照会者(受託者)は、照会者の母(委託者兼受益者。以下「母甲」といいます。)との間で母甲の居住用家屋及びその敷地(以下「本件物件」といいます。)を信託財産とする信託契約(以下、「本件信託契約」といい、本件信託契約に係る信託を「本件信託」といいます。)を締結していたところ、本件信託は受益者の死亡を信託終了事由としていたことから、母甲の相続開始により本件信託は終了し、残余財産となった本件物件は、残余財産の帰属権利者である照会者及びその弟(以下「照会者ら」といいます。)に帰属することとなりました。
 照会者らは、母甲の相続開始日が属する年の翌年に本件物件を譲渡しましたが、その譲渡に係る譲渡所得の計算上、租税特別措置法第35条第3項《居住用財産の譲渡所得の特別控除》に規定する特例(以下「本件特例」といいます。)を適用するに当たり、本件物件が本件信託の残余財産として照会者らに帰属したこと(以下「本件帰属」といいます。)は、同項に規定する取得(相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。以下同じです。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等(以下「被相続人居住用家屋等」といいます。)の取得。)に該当すると解し、その他の要件を満たす限りにおいて、本件特例の適用を受けることができると解してよいか照会します。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 照会者らは、いずれも母甲の相続人です。
(2) 照会者は、令和2年〇月〇日、母甲との間で、委託者兼受益者を母甲、受託者を照会者、信託財産を本件物件及び金銭、本件信託の終了事由を母甲の相続開始等、本件信託終了時の残余財産の帰属権利者を照会者らとする旨の本件信託契約を締結しました。
(3) 本件信託契約においては、その信託期間を契約締結のときから委託者兼受益者が死亡したときまでとし、かつ信託期間が満了した際には信託が終了する旨定められていたため、当該契約に基づき、令和3年〇月〇日、母甲の相続開始により本件信託は終了し、残余財産となった本件物件は、照会者らへ帰属しました。
(4) 照会者らは、令和4年〇月〇日、本件物件を譲渡しました。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 本件特例は、譲渡をした者が「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)であることを要件の一つとしています。
 また、相続税法第9条の2第4項《贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利》では、受益者の死亡に基因して終了する信託に係る残余財産の帰属は、適正な対価の負担があるもの及び信託終了の直前において当該信託の受益者であった者に対するものを除いて、遺贈により取得したものとみなす旨規定されています。
 そして、本件特例が適用対象者を「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人としているのは、相続人がその意思の如何にかかわらず、相続により被相続人居住用家屋等の取得をし、その後の適正管理の責任を負うことになるためと考えられますが、照会者らは、これと同様の状況にあるということができます。
 したがって、本件物件は、相続税法上のいわゆるみなし相続財産に該当すること及び照会者らは本件特例の趣旨と同様の状況にあることから、本件帰属は、本件特例に規定する「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当すると考えます。

〔回答〕

⑥ 令和4年12月20日 東京国税局審理課長回答
⑦ 回答内容
標題のことについては、下記の理由から、貴見のとおり取り扱われるとは限りません。
 なお、この回答内容は、東京国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないことを申し添えます。
                                 

(理由)
 租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第35条第3項に規定する特例(以下「本件特例」といいます。)は、相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。以下同じです。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等(以下「被相続人居住用家屋等」といいます。)の取得をした相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)が、一定の譲渡をした場合に、その譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることができる旨規定しています。
 ところで、信託契約などにより信託の受益権を取得する行為や、信託が終了し残余財産が権利者に移転した場合などについては、法律上の「贈与」又は「遺贈」には該当しないものの、実質的には贈与又は遺贈と同様の効果をもたらすことから、相続税法においては、これらの取得又は移転などについて贈与又は遺贈による取得とみなして相続税又は贈与税の課税対象とする措置が講じられています(相続税法第9条の2)。
 この点、本件特例は、例えば措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》に規定する特例のように、相続税法の規定により遺贈等による財産の取得とみなされる場合を対象に含む旨は規定していません。
 また、本件特例は、相続人が、相続により、その意思の如何にかかわらず、被相続人居住用家屋等の適正管理の責任を負うこととなることを踏まえた趣旨の下、適用対象者を相続人に限定し、かつ、「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした場合に限り適用すると規定したものであると考えられるところ、信託終了による残余財産の取得は法律上の相続又は遺贈には当たらず、受託者(照会者)は信託行為の当事者であること、信託行為の当事者ではない帰属権利者は、その権利を放棄することができること(信託法183③)を踏まえると、上記本件特例の趣旨の下では、帰属権利者による残余財産の取得を相続人による相続又は遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことは相当ではないと考えられます。
 以上のことから、信託契約に基づき、委託者兼受益者の相続開始という信託終了事由の発生により信託が終了したことに伴い、当該信託に係る残余財産を帰属権利者が取得したことは、本件特例に規定する相続人による「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当するとは認められず、また、死因贈与契約に基づき当該残余財産を取得したとする事情も認められませんので、当該残余財産の譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることはできません。

※ この国税局の回答が実務に与える影響も少なくないです。
(By:国税庁ホームページ)https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/joto-sanrin/221220/01.htm#a01

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