相続人不存在による所有権登記名義人氏名変更及び共有者の一人が相続人なくして死亡した場合の持分全部移転の登記
相続人不存在による所有権登記名義人氏名変更及び特別縁故者不存在確定を原因とする亡甲相続財産持分全部移転
➀ 共有者の一人が死亡し、その相続人のあることが明かでないときは、その死亡者の共有持分は「相続財産」という法人名義となります(民951条)。この場合には、その相続財産の管理人が選任され(民952条1項 )、 家庭裁判所はその選任公告をします(同条2項)。一方、管理人の申立てにより債権者と受遺者に対する権利請求の申出(民957条)、相続人捜索の公告(民958条)がなされても、その公告期間 (6か月を下らない期間)以内に権利主張者のないときは、相続人不存在が確定します(民958条の2) 。
また、上記の公告期間満了により相続人の不存在が確定し、かつ、民法958条の3第2項の3か月の期間以内に特別縁故者からの財産分与の申立てがなかったとき(又はその申立てを却下する旨の審判が確定したとき)の他の共有者への権利の帰属時期は、申立ての期間の満了日(又は申立てを却下する旨の審判が確定した日)の翌日とし、登記原因は「特別縁故者不存在確定」とするものとされ、その日付は、被相続人の死亡の日から 13か月の期間の経過後の日であることを要する取扱いであり、これに違背する申請は、改正前不動産登記法49条 4 号(現行不登法25条 5 号)により却下すべきものとされています(平成3·4·12民三2398通達)。
② 登記の目的として、移転する相続財産全部、すなわち死亡した共有者の相続財産共有持分全部の移転(民255条)の登記である旨を記載します(不登令3条5号)。
③ 登記原因としては、前記➀に示したように「何年何月何日特別縁故者不存在確定」と記載しますが、その日付は、民法958条の3第2項の期間満了日の翌日又は上記の期間内に同条1項の請求があり、かつ、分与しない旨の審判が確定した日の翌日を記載します。
④ 登記権利者として、相続財産を取得した他の共有者の氏名・住所及び各取得者の持分を記載します。
⑤ 登記義務者は、法人「亡甲相続財産」です。
⑥ 登記原因証明情報としては、上記③の各種書面を添付します。
⑦ 登記義務者の登記識別情報(又は登記済証)は、「亡甲」(被相続人)が所有権を取得したときの登記識別情報(又は登記済証)を提供します。なお、登記識別情報(又は登記済証)を提供することができないときは、その理由を記載します。この場合は、不動産登記法第23条第1項、第2項により登記官の事前通知による本人確認か、同条第4項により資格者代理人(不登規72条)による本人確認情報⑪を提供すべきものとされています。
⑧ 登記義務者「亡甲相続財産」の法定代理人である相続財産管理人の印鑑証明書を添付します。
⑨ 登記権利者の住所を証する住民票の写しなどを添付します。
⑩ 登記義務者の法定代理人であることを証する相続財産管理人の選任審判書を添付します。なお、法定代理人たる管理人から復代理人による申請の場合は、さらに復代理の委任状を添付します。
<参考:「相続における戸籍の味方と登記手続」高妻新・荒木文明著>